企業ソーシャルメディア・ウォッチ : 王将フードサービス (下)
 
 
そんな王将フードサービスが、このたび、ふたたびソーシャルメディアをざわつかせる、あるアクティビティを行いました。とはいっても、いわゆる炎上ネタではありません。むしろ、ほぼ全ての人にポジティブに受け取られるような、「善行」のニュースが拡散したのです。
 
 
 
さる2月の北陸地方の豪雪で、立ち往生していたドライバーたちに、「餃子の王将」丸岡店が、副店長の発案で無料でラーメンを振る舞ったというものです。心もお腹もほっこり、といった、いいたたずまいのエピソードなのですが、どこかで聞いたことのある話ですよね・・・そうです、ヤマザキパンのドライバーが、そのままだと廃棄処分せざるを得ない、配送中のパンを、立ち往生した車に配った、という数年前のエピソードに、そっくりなのですね。
 
 
 
別に、王将がヤマザキをパクった(パンだけに)などと言うつもりではありません。どちらも、いいエピソードなのですが、両者にはいくつかの共通点が見受けられます。
 
まず、両ブランドとも、そのエピソードが拡散される前の時点では、どちらかというとブランドにネガティブな印象がつきまとっていました。
 
ヤマザキパンについては、あちこちのネットニュースやブログ記事で、トランス脂肪酸等の「あぶない成分」を使っているから、ランチパック(商品)はいつまで経っても腐らないのだ、といった、まことしやかな噂が流され、叩かれていました。
 
これについて、ヤマザキパンはあまり反応を見せてはおらず、基本的には柳に風、と受け流す姿勢のようでした。ごくわずかに、同社の徹底した衛生管理体制を絶賛する第三者の記事などで、腐らないのは衛生管理のレベルの高さの現れだ、と反論するものもありましたが、じわじわと裾野広く拡散する「あぶない成分」説を押しとどめるほどの力はありませんでした。噂の段階では、ネガティブは、常にポジティブに勝ります。
 
しかし、この、「パン配布」エピソードの後は、ブランドイメージが格段に改善され、局面は大いに変わりました。噂以前の段階で、ブランドがポジティブに受けとめられ始めたことで、ネガティブな噂が拡散する余地が少なくなったのです。
 
もうひとつ、両者には共通点が見受けられます。すなわち、配送ドライバー(ヤマザキパン)、副店長(王将)と、それぞれ現場のプレイヤーが、組織にはからず、独断で「善行」を行った、という図式です。主役が組織でなく、個人であることで、情報の受け手がそれを自分のことのように考えることができたのが、拡散に一役買ったのではないでしょうか。組織は、そんな「勇敢な個人」を認め、支援することによってのみポジティブなイメージを身にまとうことができます。
 
前編冒頭の、餃子の王将がブレずに主張し続けている要素、「店長(個人)を成長させることがもっとも大切」という主張に、どこか重ならないでしょうか?
 
研修などのやり方に、多少の行き過ぎはあったかもしれませんが、一見、ソーシャルメディアとは縁の遠そうなブランドが、個人を全面に押し出すことで、まわりまわってソーシャルで存在感を放った、これは、もしかしたら、そういうことなのかもしれません。