ワールドカップ
Photo credit: Paulisson Miura on VisualHunt.com /  CC BY

 

 
戦国時代屈指の知恵者と言われたある武将が、「より良い判断をするには、何を基準としたら良いのか?」と問われ、こう答えたそうです。「基準は、仁愛だ」と。すなわち、なるべく人を傷つけず、その決定が皆のためになることなのかどうかを私は判断基準にする、とその知恵者は答えたのだそうです。
 
話は変わって、2018年のサッカー・ワールドカップ。苦戦を予想された日本代表が、開幕後2戦の時点で予選リーグ突破の可能性が高いと言われる快進撃を続けています。特に、初戦のコロンビア戦は、「ハンパない」「入ってないっすよー」といった、流行語大賞にノミネートされるかもしれない流行り言葉を産みましたね。
 
特に、「ハンパない」については、もともとは全国でテレビ放映された番組の映像がもとになっているのですが、今回、コロンビア戦での大迫選手のゴールに連動してこの映像が大拡散したのは、もちろん、YouTubeにアップされていた動画が起点になっています。日本代表の大金星を決定づけたゴール、その喜びを皆でシェアするためのポジティブな意味合いを持つ「よい」拡散であると思うのですが、企業のマーケティングの参考にするには、考えておくべき問題が二、三、あります。
 
まず、起点となった動画自体が、(おそらくは)放映元に権利未確認の勝手動画だということ。YouTubeでは、はっきりとした申し立てがあれば削除もされるようですが、この動画は長らく放置されていました。
 
次に、この動画に登場する選手は、すでにサッカー選手をやめ、一般のサラリーマンとして勤務されているとのこと。今回の拡散を受けて取材依頼が殺到したらしいのですが、それらに答えることなく沈黙しています。明らかに「そっとしておいてほしい」というご本人の意思表示であり、そうした意向を知りながら、なおかつ顔の画像や動画がシェアされ続けることに、プライバシーや肖像権についての問題は生起しないのか、ということを示します。
 
そんなさなか、日本代表の第二戦、おそらくは予選突破のための天王山となるであろうセネガル戦において、敵方のベンチを束ねる、アリウ・シセ監督の独特の雰囲気・ゼスチャーを利用したパロディ・ツィートが、Twitterを賑わせました。
 
   
 
#吹奏楽部のシセ先生 です。
 
こちらも、もちろんアリウ・シセ氏に許諾をとった上で「イジって」いる訳ではなく、元になる映像や画像の権利関係なども、厳密にいうなら問題は残るでしょう。しかしながら、シセ氏の格好良さ、知的でアーティスティックな雰囲気を前提として皆が認めた上で、いわば「あっぱれな敵」として、レスペクトを込めた「イジり」であることは明らかです。
 
サッカー監督のゼスチュアに、「吹奏楽」という、まったく何の関係もない異物を当てはめ、結果として、愛嬌や上品さを醸し出すことになったのも見事です。これらの拡散ツィートに接した多くの人が、セネガルやシセ氏に、興味を抱くきっかけにもなるでしょう。
 
勝敗とは別のところで、あっぱれで格好良い敵将のキャラクターを愛でるツィート。誰をも傷つけず、ポジティブなイメージを植え付ける拡散。愛を込めた、こうした展開は、おそらく、企業のソーシャルメディアとの関わり方を考える際にも参考になることでしょう。